Project Story

プロジェクトストーリー

新たな挑戦が、
これまでにない「!」へ

Project02
02

リチウムイオンバッテリーの
進化を担う。
つまり、より良い未来を
創造する取り組み。

Prologue

スマートフォンをはじめ、リチウムイオンバッテリーは、世界中でさまざまな用途に利用され、脱炭素社会の実現に向けた電気自動車の普及においても、重要な役割を担っている。「BSF装置の拡販」プロジェクトは、こうしたリチウムイオンバッテリーの需要拡大に応えるという目的を有する。つまり、サステナブルな社会に貢献するためのチャレンジでもあるのだ。

Member

水上 雄太

水上 雄太

成形機カンパニー
押出技術部
工学部卒 / 2007年入社

大学時代は電動車いすの研究に取り組み、自動車に関わる仕事がしたいと入社。世界的な潮流である電気自動車の普及に大きく貢献する技術者として、日々、研究課題に取り組んでいる。

田村 政嗣

田村 政嗣

成形機カンパニー
押出技術部
理工学研究科卒 / 2001年入社

環境対策、世界各国のメーカーとの協業。そこから実感するのは、芝浦機械は、子どもたちの未来や豊かな社会を作る企業であること。そんな誇りを胸にプロジェクトに取り組んでいる。

山口 智則

山口 智則

成形機カンパニー
押出技術部
工学部卒 / 2004年入社

技術者として、電池のリサイクルといった資源の有効利用など、省エネを常に意識。SDGsこそ次世代のキーワードと考え、新たな技術の開発にも思いを馳せている。

Story01:始まり

Story01:始まり

それはある企業の依頼から始まった

今を去ること20余年をさかのぼる。ある国内の装置メーカーから、BSF(バッテリーセパレータフィルム)における依頼があった。BSFとは、リチウムイオンバッテリーの正負極の分離膜のことである。リチウムイオン透過、絶縁性、異常発生時の安全確保を目的とした微多孔膜で電池性能を左右する重要な部材だ。芝浦機械の技術力を期待して、その改良についての打診があったのである。
そのころから、さまざまな分野の企業から引き合いがあり、個々に対応していた。それが、10年ほど前から状況が一変する。海外のメーカーからのオーダーが飛躍的に増えてきたのだ。中国の電気自動車産業が本格化したころと一致する。技術者の一人、水上は入社2年目からプロジェクトリーダーとして、この業務を担当している。田村や山口も、水上同様、リーダーとして各プロジェクトを牽引し、統括している。彼らの役割は、営業にはじまり、設計から現地調整まで、すべてのプロセスを統括し、プロジェクトを軌道に乗せることなのである。

Story02:乗り越えるべき壁

Story02:乗り越えるべき壁

中国での苦闘の日々が
もたらしたもの

各プロジェクトで、それぞれに課題は異なる。例えば、水上が携わった中国での案件では、入社5年目という若さもあり、厳しい日々に追われたという。「このBSFの製造装置は、二軸混練押出機や縦延伸機、横延伸機など、さまざまな機能を有したユニットを配置したもので、全長100mを超えるほどのラインになります。各ユニットにはそれぞれ製品に合わせたハンドリングが必要で、調整しながら装置を運転するがなかなか想定通りにはいかない。試行錯誤の連続でした。しかも、中国現地では言葉も通じにくい。意思の疎通という点でも、苦心しました」と語る。
より高度化した電池性能への要求、広幅化への要求、生産性の向上、そこで技術を確立していく。水上は、こうした課題に直面しながらも、設計、製造など技術者たちとコミュニケーションを密に図りながら、プロジェクトを成功へと導いた。
「お客様も含め、関わる皆さんとの信頼関係が極めて重要だということに気づいた経験でもありました。この中国のプロジェクトの経験は、確かに今に活きています」

Story03:成功への挑戦ポイント Story03:成功への挑戦ポイント

Story03:成功への挑戦ポイント

より高みを目指せと市場が望む

「このBSF装置のプロジェクトは、営業にはじまり、設計、調達、製造、出荷、現地調整など、さまざまな役割の人々で構成されています。私たちプロジェクトリーダーは、すべてのプロセスをいかに円滑に進行できるか、それが最も大きな役割のひとつなのです」と、語るのは田村だ。場合によっては、2年を超える期間を要するプロジェクトもある。そんなケースでも、リーダーに求められるものは、地道な信頼関係の構築だと、水上と異口同音に話す。
さて、最近では、より高度な技術が求められている。製品幅3.2mというサイズがこれまで一般的だったが、増産というニーズに応えるため、製品幅を5.5mにという要求が生まれてきたのだ。ラインの各ユニットを経て、最終的に製品として生産されるBSFは髪の毛の太さの1/5~1/10と極めて薄いものである。その幅を伸ばすことは、そう簡単なことではない。技術的にクリアすべきハードルは、多い。しかし、市場のニーズに応えてこそ、成功への道が拓ける。彼らプロジェクトリーダーたちも、その目標に照準を合わせているのだ。

Story04:その後

Story04:その後

ニーズは、薄さにも限界を求める

「製品幅だけではなくて、薄さにも厳しいオーダーが来ています」と語るのは、山口だ。BSFの用途の広がりに歩調を合わせるように、より高性能であることが求められている。「当初の製品厚さは20ミクロンでありましたが、要求品質が高まり12ミクロンとなり、それが現在は9ミクロンがスタンダードになってきています。その先には、7ミクロンという話も来ています。薄くすればいいというわけではなく、当然、強度も求められます。材料や混ぜ方など、これからもさまざまな試行錯誤をしていかないといけません」と続けた。しかしその言葉からは、やってやろうじゃないか、技術者としての気概も垣間見えた。
今後、電気自動車は、中国からヨーロッパへと市場をさらに拡大すると予測されている。それは、彼らプロジェクトリーダーたちの活躍する場が広がることを意味する。
「私たちには、市場に供給する責務があります。お客様の要望に応えるためにも、生産能力の拡大など、取り組むべきテーマは少なくありません」と水上。その言葉には、将来への期待も込められているかのようだった。