Project Story

プロジェクトストーリー

新たな挑戦が、
これまでにない「!」へ

Project01
01

より高い加工精度実現のため、
たった一人の高精度画像処理への挑戦が始まった。

Prologue

精密加工の分野では、回転中の工具の状態を正確にとらえることが極めて重要だ。そのために搭載しているのが、機上測定器である。「撮像式工具形状測定器開発プロジェクト」は、より画像処理の精度を高め、同時に、よりリーズナブルに顧客に提供できる測定器の開発を目的としたものだ。このテーマにたった一人で立ち向かったのは、室伏勇。工作機械カンパニーのリーダーの一人として活躍する技術者である。

Member

室伏 勇

室伏 勇

工作機械カンパニー
工作機械技術部
工学部卒 /2008年入社

入社以来、製品は変わったが、一貫してソフトウェア開発に携わってきた。現在は超精密加工機を担当。ポリシーは、常に前向きにアグレッシブに挑戦する技術者であることだ。

Story01:始まり

Story01:始まり

より高品質な製品を顧客に
届けるために

室伏は、担当する製品は変わったが、入社以来一貫してソフトウェア開発に携わってきた。現在の超精密加工機を担当するようになったのが、2015年。加工機内のセンサーによる測定器の開発に取り組んできたが、彼は常々、価格と精度という二つの大きなテーマを強く意識していた。彼のなかには、顧客が満足できる製品を提供したいという技術者の側面と、商売として成功させたいというビジネスマンとしての側面が共存していたのだ。
ある時、彼は上司に温めていたプランを提案した。それまで、大手メーカーより購入していた測定器を内製化するためのプランである。それによって、機能の向上とコスト削減を目論んだものだ。上司は失敗してもいいと、彼の背中を押してくれた。機上測定器は、大きく分けると、最も安価なレーザー式、ライン式、そして最も高精度で、かつ高価な撮像式という3つの種類に分類される。彼は、このなかの撮像式にこだわった。高品質な製品を顧客に提供するためである。

Story02:乗り越えるべき壁

Story02:乗り越えるべき壁

トライ&エラーの繰り返し

その日から、精度と価格という相反する課題を共に満たすべく、室伏の孤独なチャレンジが始まった。とはいえ、社内には、心強い味方となる技術者も大勢いる。設計、製造、生産管理など、培ってきた各セクションの人脈を活かして、巻き込んで、プロジェクトを進めていった。当然、自身の業務もある。スケジュールを調整し、時間を惜しんで、取り組んだ。
最も大きなハードルとなったのが、光学系ハードの選定だ。極めて高価な撮像式搭載の測定器を、可能な限り低価格でお客様に提供するためには、重要なポイントだった。「画像処理の世界ではAIを含め、技術の進化は目覚ましいものがあります。そこで、ハードの選定には、大変苦労しました。多くのメーカー、多くの機器。可能な限りのテストを重ね、トライ&エラーの繰り返しでした」と語る。展示会があると聞けば出向き、自らの目で機器の性能を確認したりもした。そして、納得できるレベルの測定器にたどり着いた。「周囲の皆さんの協力もあって、目標とする精度と価格が実現できるものを開発することができました。何より“失敗してもいいぞ”という上司の言葉は支えになりました」

Story03:成功への挑戦ポイント Story03:成功への挑戦ポイント

Story03:成功への挑戦ポイント

いかにお客様に利益をもたらすか

ひとつの到達点に達したとはいえ、室伏はけっして満足はしていなかった。「確かに良いものは作りましたが、そこはゴールではありません。お客様に届けて、それが利益をもたらして、初めて目的を果たしたことになるからです」
彼は、その目的のために、さまざまな活動を行っている。たとえば販促活動である。論文を発表し、講演も行った。一般社団法人型技術協会の主催する型技術ワークショップ2020では、奨励賞にも選ばれている。広く知名度をあげて、ビジネスにつなげていく。こうした活動を通じて、彼の生み出した測定器は、業界内に浸透していくことになった。
「このプロジェクトとしては、撮像式工具形状測定器『FormEye』として、販売を開始して、好評もいただいています。しかし、けっして、これがゴールではないのです」。この彼の一貫した姿勢が、プロジェクトの成果をもたらした最も大きな要因なのかもしれない。

Story04:その後

Story04:その後

この成功は通過点に過ぎない

撮像式工具形状測定器『FormEye』は、まだ粗削りだと室伏は語る。さらなるブラッシュアップを目指しているのだ。実際、顧客からは、もっと高精度にできないかという問い合わせもあるという。
「お客様の要望に応えるために、さらに機能を向上させようと取り組んでいます。現在、そのための調査に着手したところで、方向性も見えてきた段階です」
こうした室伏が取り組む姿勢や技術の蓄積は、後輩たちにも大きな影響を与えているようだ。
「工作機械の分野でも、今後ソフトウェアの重要性はますます高まっていくと思っています。私の持っている知識や経験を、後輩たちに伝えていくことも、私の使命なのです」
そのうえで、と、彼は言葉を続けた。「そんな後輩たちにも負けないよう、私自身も常に成長していきたい」プロジェクトは、撮像式工具形状測定器『FormEye』という成功を生み出したが、それは彼にとってただの通過点に過ぎないのだ。