ダイカスト金型用の新しい表面処理技術を開発（金型寿命が大幅に向上）

2002年10月28日

当社は、このほど、ダイカストマシンに使用する金型の表面処理技術を開発しました。本処理を施すことにより金型の寿命が大幅に向上し、ダイカスト製品の生産性向上、品質安定化に寄与いたします。

ダイカストマシンでは、アルミニウム合金などの溶湯を金型内に高圧で充填し、高精度の鋳物製品を製造します。溶融したアルミニウム合金は、鋼との反応性が高く、鋼製の金型は短期間で溶損(溶湯によって浸食される現象)が発生します。溶損対策の表面処理として、従来の金型では主に窒化処理を行ない、金型表面にアルミニウムとの反応を抑制する効果がある窒化鉄を形成させますが、窒化鉄は使用中に分解・消失するので、耐溶損性(溶損を抑える性能)を長期間維持することはできませんでした。
開発した表面処理層では、金型表面に窒化クロムが形成されます。窒化クロムはアルミニウムとの反応を抑制する効果が大きく、使用温度では分解しないので、処理層の耐溶損性が長期間維持できます。本処理層の耐溶損性は、従来の窒化処理層の約5～8倍と推定されます。
本処理層は、金型基材の中に窒化クロムを分散させた構造です。処理層が基材と一体化しているので、50μm以上の厚さで窒化クロムを形成させることを実現しました。従来技術の気相めっき法(PVD、CVD)では、数μmの厚さしか窒化クロムを形成できないため、過酷な使用環境の中では性能が発揮されない場合がありました。しかし、本処理では、窒化クロムを厚く形成しているので、使用条件にかかわらず金型の寿命が安定しています。

ダイカスト製品のコストに占める比率の高い金型の寿命改善は、業界の長年の課題となってきましたが、近年のダイカストマシンの高速化、高サイクル化により、金型の損傷が起こりやすくなっており、金型の寿命改善の要請がますます高まっています。本技術をダイカスト金型に応用することにより、大幅に寿命を伸ばしコスト低減に寄与するものと期待されます。現在サンプル出荷をし、実機での評価を進めているところです。
本技術につきましては、本年11月7～9日に神奈川県パシフィコ横浜で開催される、「2002年日本ダイカスト会議・展示会」で講演する予定です。

特長

• 溶融アルミニウムに対する耐溶損性が非常に優れ、金型の寿命が大幅に向上する。
• 過酷な使用環境でも安定した金型寿命が得られる。