薄切片試料作製装置を開発(病理組織の研究分野、食品業界等での拡販を目指す)

2002年7月5日

薄切片試料作製装置ASGシリーズ
薄切片試料作製装置ASGシリーズ

当社は、このほど、厚さ3μmの薄切片を自動で切り出す薄切片試料作製装置を開発し、本格的に販売を開始しました。

この薄切片試料作製装置は、東京大学、財団法人神奈川科学技術アカデミー(KAST)および当社が共同で行なってきた研究成果を基に、東京大学大学院 工学系研究科 樋口俊郎教授の指導を得て当社が製品化し、厚さ3μmの薄切片(試料)を自動的に作製する装置で、スライドガラス型(ASG型)と粘着テープ型(ASP型)の2つのタイプがあります。

病理分野における組織診断は、手術などにより患者から検査対象となる組織を摘出し、顕微鏡を用いて検査・診断を行ないますが、現在は、臨床検査技師が検体を包埋した試料ブロックからミクロトームという装置を用いて3~7μm程度の厚さに薄切し、その薄切片を一枚一枚手作業でスライドガラスに貼付しています。

スライドガラス型は、この作業を自動化したもので、3~5μmの薄切片を、品質が安定した状態で効率的に作製することができます。作製された薄切片は、スライドガラスに自動的に貼付され伸展盤で伸展されます。従来、臨床検査技師の経験・作業コンディションによって薄切片の品質が一定しなかったこと、薄切片からの臨床検査技師への感染の可能性、試料ブロックと薄切片との対応錯誤などの問題がありましたが、これらの問題も解決されます。特に、1つの試料ブロックから多数の薄切片を切り出す「連続薄切」作業が有効であり、病理組織の研究分野、製薬メーカー等での導入が期待されます。

粘着テープ型は、粘着テープを試料に貼り付けた後、試料を薄切し,粘着テープ上に薄切片を取り出すもので、粘着テープ上に取り出された薄切片は、そのままの状態で染色を施すことができます。さらに、染色された薄切片を撮映し、画像データとしてコンピュータに取り込んだ後、画像処理により薄切片画像を積み重ね、コンピュータ内で3次元の画像を構築することができます。

こうすることで、物体の内部構造の把握、品質成分や機能成分の物体内の立体的な分布状態を、視覚的に把握することが可能となります。当社では、本装置と併せて3次元画像解析ソフトウェアも開発・販売し、病理組織の研究分野、食品業界等立体画像による分析を必要としている分野での拡販を目指していきます。

主な特長

スライドガラス型

  • 最小薄切厚さ3μmの薄切片を作製可能。
  • 薄切片作製作業経験の少ない方や切り出しが苦手な方でも、容易に安定した品質の薄切片試料を作製可能。
  • 品質の安定した薄切片を作製可能。
  • 特に一つの検体から多くの薄切片を切り出す「連続切片」の作製に有効。
  • 断面サイズ24×30mm以下のパラフィン包理試料に対応。
  • 切れ刃には標準的なミクロトーム用替え刃0.254×8×80mm(FEATHER社製A35、S35相当品)が使用可能。
  • 病理検査用のカセットシステムに包理した試料が装着可能。

粘着テープ型

  • 粘着テープを試料に貼り付けた後、試料を薄切し、粘着テープ上に薄切片を取り出すため、しわ、破れ等の発生が少なく、良好な薄切片の安定的作製が可能。
  • 粘着テープ上に取り出された薄切片はそのままの状態で染色を施すことが可能。
  • 粘着テープには、HE(ヘマトキシリン・エオジン)染色を施す際に必要なキシレン等の有機溶剤を使用した際にも、透明度が低下しないものを採用。
  • 染色を施した薄切片は、連続的に顕微鏡観察を行なったり、染色された薄切片を撮映し、画像データとしてコンピュータに取り込んだ後、画像処理により薄切片画像を積み重ね、コンピュータ内で3次元の画像を構築することが可能。
  • 画像処理に、東芝機械で開発した3次元画像解析ソフトウェア「Voxel Viewer(ボクセルビューワー)」を使用することで、3次元像の構築、任意断面観察、体積計測等を行なうことが可能。

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