ダイカストマシン用高性能プランジャスリーブ(2機種)を開発

2001年1月29日

高性能プランジャスリーブ
高性能プランジャスリーブ

当社は、アルミニウムやマグネシウムといった軽金属を溶融させて金型内に圧力し、高精度の鋳物製品を製造するダイカストマシンに使用される、次の2種類の高性能プランジャスリーブを新しく開発しました。

(1)アルミニウム合金用で、従来品に比較し耐久性のある長寿命スリーブ。
(2)マグネシウム合金用で、溶湯をより高く保持できる保温スリーブ。

スリーブは、注湯受けと溶湯の射出を行なうシリンダーの役割を担う部品で、従来から溶融金属に対する耐溶損性や保温性が求められており、本開発品は、従来材に変わる次世代のスリーブとして期待できます。

アルミニウム用長寿命スリーブは、アルミニウム合金溶湯に対し優れた特性を備えたサーメット(セラミックスと金属の複合材料)を、鋼材のスリーブ内周にライニングした2層構造になっています。使用したサーメットは、当社で開発した特殊合金で、粉末冶金法によって製造されます。本サーメットは、耐アルミ溶損性、耐磨耗性に優れ、高い靱性を備えており、680℃のアルミニウム合金溶湯中に静置した場合の溶損試験において、従来材である熱間金型用鋼の窒化材と比較し、約10倍の優れた耐溶損性を示しました。破壊靱性値は、従来からスリーブに用いられていたセラミックスやサーメットより大きく、耐衝撃性に優れています。また、熱膨張係数は鋼材と近く、チップのクリアランスに特別の注意を払う必要はありません。すなわち、実際の現場での使用において、従来の窒化材スリーブと同様の扱いとすることができます。

長寿命スリーブを、型締力200トンと250トンのダイカストマシンに取り付けて実機稼動したところ、1年以上稼動した現在でも支障なく使用されており、従来比でそれぞれ8.5倍、7倍の寿命を示しました。開発スリーブは、50万ショット経過しても、湯当り部を含めてまったく溶損を生じないことがわかりました
一方、マグネシウム用保温スリーブの素材は鋼材ですが、熱伝導率が低く、そのうえ基材硬さ、表面硬さは、従来の窒化材並み以上の性能を有しています。熱伝導率がセラミックス並みに低く、溶湯の保温性に優れています。熱膨張係数は、窒化材や他の鉄鋼材料に近く、膨張率に起因した問題が発生しないのが特徴です。そのため、従来スリーブと全く同様な使い方ができます。

開発スリーブの保温性能を確認するため、スリーブに注湯後のマグネシウム合金の溶湯温度の変化を調査したところ、注湯後約1秒経過時点で、開発スリーブは従来スリーブと比較し、約30℃高く溶湯を保持できることがわかりました。

釘打ち機を720℃の溶解温度でダイカストした場合、従来の窒化材スリーブを使用したときの製品の良品率は61%でしたが、開発スリーブでは、溶解温度を50℃下げ670℃でダイカストしたにもかかわらず、良品率が79%に向上しました。またパソコンの筐体を、710℃の溶解温度でダイカストした場合では、従来スリーブをガスバーナーで加熱しながらダイカストしたときの製品良品率は94%でしたが、開発スリーブでは、ガスバーナー加熱をせずに、しかも溶解温度を20℃下げ690℃としたときの良品率は、従来の方法と同程度でした。 なお、アルミニウム用長寿命スリーブは、販売を開始しました。また、マグネシウム用保温スリーブは、今後当社ダイカストマシンに搭載して、従来のスリーブでは困難であった製品の製造に適用していく予定です。

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